探偵少女

 夢里は優しく微笑むと、その場を離れていく。


 すると、蒼空のスマホにメッセージが届いた。


『知由さま』


 蒼空は迷わずメッセージを開く。


 喜んでいるように見えたのに、すぐにその笑顔が消える。


 無言のままスマホを睨みながら操作するから、晴真は妙に恐ろしく感じた。


 晴真のスマホが鳴る。


『町田蒼空』


 蒼空は、晴真に知由のメッセージを転送した。


「僕、スタッフさんたちのお手伝いしてきますね」


 不穏な空気を一瞬で消し飛ばす笑顔は、演技者の自信を奪ってしまうようなものだった。


 晴真は、後から荷物を持ってきた立花と合流して、とりあえず控え室に移動した。


 そこでスマホを開く。


『朝原晴真に、城井深雨をどうしたいか聞いて』


 晴真は目を疑い、もう一度、それを読む。


 何度読んだって、そこには間違いなく『城井深雨』と記されている。


『特定は知由さまに任せていたらいいんです』


 蒼空のあの言葉の意味を、ようやく理解した。


 特定するということは、相手のことを完全に把握することだったのだ。


 晴真は返事に迷う。


 その間に衣装に着替えたり、メイクをしたりする。


 結局、答えは出なかった。