探偵少女

「わかりました、すぐ出ます」


 いつもの変装道具を身につけて、家を出る。


 いつ誰に声をかけられるかと怯えながら歩くが、マンションを出るまで、すれ違いはするが、誰も声をかけてこなかった。


 自分が見たあの騒ぎは夢だったのか。


 そう錯覚してしまうほどに、いつも通りだ。


「相手が知由さまでよかったですね」


 急に声をかけられ、振り向くと、蒼空が仁王立ちしている。


 聞かずとも不機嫌なのがわかる。


「それ、どういう」
「車の中で話します」


 蒼空は晴真を置いて、そばに立花が立っている車の、後部座席に乗る。


 立花と蒼空は昨日のうちに顔を合わせていたから、立花はなにも言わない。


 晴真は混乱したまま、運転席の後ろに座った。


「相手が彼女でよかったって、どういうことですか」


 立花がエンジンをかけると同時に聞く。


「マスコミが騒がないってことです」


 蒼空の言葉は足りなさすぎて、ますます理解できなくなる。


「知由さまはもともと注目の的になりやすいんです」


 人気女優の娘というだけでなく、あの容姿で、注目されないほうが不思議だとわかるから、晴真は黙って聞く。