改札口前、人々が行き来する。

雑踏の中で無言で2人別れを惜しみ手を離す事がなかなか出来ない。

果穂が意を決した様に俺に向き合い笑顔を向ける。
「翔さん、またお電話して下さいね。
お仕事、あんまり頑張りすぎないように。
後、ご飯もちゃんと食べてくださいね。」

「ああ、果穂も風邪ひかないように。」
うん。と小首を縦に振る仕草を可愛いなと見つめながら、人目も憚らず抱きしめる。

頬に触れ困り顔の果穂を見て微笑み、キスをしたいと思う衝動をなんとか抑えて手を離す。

「じゃあ、また。」
そう言って、果穂は俺から荷物を取り上げ背中を向けて改札を抜ける。

何回か振り返って手を振って、見えなくなって行く。

俺はしばらく、動けずその場に立ち尽くした。

この寂しさは、何回繰り返せば慣れるのだろうか…。