俺様社長は純情な田舎娘を溺愛する

「そう言えばバイト先のオーナーがお姉ちゃんの着物の写真、ネットに載せたいって言ってたんだけど、ダメかな?」

「えっ⁉︎どの写真?嫌だよ、恥ずかしいし。」
里穂がスマホを操作して写真を見せてくる。

髪をセットした時に今後の参考にしたいと、何枚か撮られた気がしたけど。
見ると、前からと、横からと、後ろからのセット写真を見せられる。

「えーダメだよ。知ってる人が見たら私だって分かったちゃうし…。」

「じゃ、横と後ろはいいんじゃない?
誰も東京の美容院なんて調べて見ないから大丈夫だよ。」

「へぇー。可愛いね。」
突然、後ろから声がして2人揃ってそちら側を見る。

「あっ!すいません、
こんにちは。決して怪しい者じゃありません。」
振り返ると、ニコニコ顔で長身の男性が立っていて私に名刺を渡してくる。

「えっ…高橋雅也さん!」
はっとして顔を見る。翔さんがよく話してくれる人だ。

「あの、始めまして。間宮と申します。」
慌てて立ち上がって挨拶をする。

「始めまして。あっ、ちょっと座らせてもらっていい?」

「ど、どうぞ…。」
雅也さんは里穂の隣の椅子に座り私も座る様に促す。

「ごめんね、驚かせちゃって。えっと、こちらは?」

里穂の方を見てそう言う。
「妹の里穂です…。」
状況がよく分からず辿々しくなってしまう。

「間宮里穂と申します。
近くの美容院でアルバイトをしています。よくこのお店でランチしてるんです。」
里穂はハキハキと答える。

「いつもご来店ありがとうございます。
妹さんなんだね、あんまり似てないからお友達かと思ってた。」
朗らかに笑いながら気にしないで食べてと、促してくれる。

「私ここのサンドも好きなんですけど、スコーンも大好きなんです。
サイズも丁度良いし、このシロップがまた、美味しくて。」
元々、物怖じしない里穂は張り切って話し出す。

「嬉しいな。スコーンは創業当初から隠れた人気があってずっと変わらずメニューに残しているんだ。」

「そうなんですね。ずっと残して欲しいです。私、冬だけ限定で出るマシュマロトーストも大好きです。」

「それはなかなかの常連さんだね。今年も12月前に出てくる予定だよ。
果穂ちゃんはサンドイッチ気に入ってくれた?」

「は、はい。とっても美味しいです。
このドレッシングも良く合っててアボカドとの相性が良いと思います。」
遠慮気味に答える。

「ありがとう。うちの開発部で試行錯誤して考え出したドレッシングなんだよ。
良い所見てくれて嬉しいな。」
ニコニコ顔につられて、思わず笑顔になる。

「可愛いね。果穂ちゃん、うちの社長が気に入る訳だ。」
どう言う事?っと里穂の視線が痛い。

「えっと…。
あっ!うちのみかんを使って下さってありがとうございます。後で、みかんパフェ食べたいと思います。」
話をはぐらかそうと頑張ってみる。

「是非、アンケートにも答えてくれる?
社長喜ぶから。」

空気を読んでるのかいないのか…
雅也さんは変わらずニコニコ顔で果穂に微笑んでくる。

「ごめん果穂、席外した隙にコイツが居なくなってた。」
後ろからまた不意に声がして心臓がドキンと弾む。