俺様社長は純情な田舎娘を溺愛する

しばらくそうしていたけれど、時間は止まる事なく過ぎて行く。

「果穂、時間になったけど、どうする?」

「あっ、ごめんなさい。ありがとうございました。あの、私お店の方から入ります。」
果穂は翔から、バッと離れて慌て出す。

「荷物、持って行こうか?行き方分かるか?」
そう言って、果穂を車から下ろし一階の裏口まで手を引いて誘導してくれる。

果穂はされるがままに後に着いて歩きながら、あっ、翔さんにお礼のストラップ渡してないと思い出す。

裏口の手前で、急いで翔に話しかける。
「あの、翔さんにお礼をと思って今日凄く楽しかったので。さっき急いで買ったので、気に入ってもらえるか分からないですけど。」
そう言ってストラップを渡す。

「えっ⁉︎俺に?ありがとう。俺は別に果穂と一緒に居られるだけで満足なんだけど。」
袋を渡され翔は戸惑う。

「今日の記念に何か形を残したかったんです。」

「開けていい?」

「どうぞ、翔さんには子供っぽ過ぎましたか?一応、私とお揃いを買いましたけど…。」

出来るだけ、翔さんが身に付けても恥ずかしく無い様、シンプルなものを選んだつもりだけど、それを買って渡す事自体子供っぽかったかもと心配になる。

翔さんはストラップを見て優しく微笑んでくれる。
「大事にするよ。」
そう言って、早速スマホに付けてくれるから嬉しくなる。
「良かった。帰ったらお電話しますね。」

果穂はホッとして荷物を持って裏口のドアを開けようと手を伸ばした。瞬間、後ろから抱き寄せられ、びっくりする。

「あ、あの…。」
どうするべきが分からなくて固まってしまう。
「俺の方が感傷的だな……。」
はぁーっとため息を吐いて手を緩める。

「やっぱり、後で駅まで送らせて。ごめん引き留めてお昼楽しんでおいで。」
そう言って、裏口のドアを押し開けて果穂を外に出してくれる。

「行ってきます。」
果穂もはにかんで笑って手を振って歩き出す。
「また、後で。」

翔もそう言って、果穂の姿が見えなくなるまでずっと見ていた。