俺様社長は純情な田舎娘を溺愛する

「遅いと妹さんが心配してないか?そろそろ帰ろう。」
そう言って、翔はまた果穂からバックを取り上げて手を繋いでレストランを出る。

ちょうど来たエレベーターに乗り込む。
「えーっと、お金払って無いです…。
せめて半分ぐらいは払います。」

「果穂からお金は出させないよ。
いくら稼いでると思ってる?一応、社長やってるんだけど。」

「でも……。」
果穂はそれでも、奢ってもらう訳にはいかないと思うが、お酒でふわふわしてるせいか頭が回らない。

「これから俺と居る時は絶対お財布出さないって約束してくれる?そしたらカバン返してあげる。」

「私ばっかり徳してる気がするんですけど…。」

「俺だって果穂と居られるだけで徳してる。」
そうかなぁと思いながら首を傾げる。

エレベーターが降りて止まる瞬間、ガタンと小さく揺れて果穂はそれだけで転びそうになる。翔が咄嗟に支えてくれる。

「大丈夫か?」
前のめりに倒れ込む形になってしまい、逃れようが無く抱き締められてしまった。

「ご、ごめんなさい。」
慌てて離れようと試みるが何故か離してもらえない。
開いたエレベーターがもう一度閉まってしまう。
「果穂、次に会ったら必ず言おうと思ってたんだけど…」

「…はい。」

「俺は果穂が好きだ、付き合って欲しい。」

「えっ⁉︎」
びっくりして翔を仰ぎみる。

私と付き合った所で何のメリットも無い。
むしろ住んでるところは遠いし、会う事だってままならない。

一目惚れしたとは言われたけれど、揶揄われてるだけだって……

「何でそんなにびっくりしてる?
会った時から結構頑張って、口説いてるつもりなんだけど全然伝わって無かったか…。」
はぁーと、翔は深いため息を吐く。

とりあえず、ずっとエレベーターを占領してる訳にはいかず、腰に手を添えられ支えられたまま歩き出す。

「送ってくから車に乗って。」
言われるまま、昼間とは違う真っ白なスポーツカーに乗せられる。

「あれ?…翔さん、お酒飲んで無かったんですか?」

「ああ、俺のはノンアルだから。
妹さんの住所だけ教えて。
眠かったら寝てってくれて構わないから。」

「寝れる訳ないです…」

「そう?でも目がとろんとしてて眠そうだけどね。」
そう言って、フワッと優しく頬を撫でられビクッとしてしまう。

「果穂は俺の事、何だと思ってたの?」
不意にそう言われる。
「揶揄われてるだけかと…。」

「考えなきゃいけない事は多いけど、だからって諦められる程軽い気持ちで言ってないから。」

「口うるさい過保護な兄もいます……。」

「全部乗り越えてみせる。」
そう言って翔さんは、軽く笑う。