コンコンコンコン。

「はい、どうぞ。」
今朝はやたら訪問者が多い…。

「おはよう。ちゃんと帰ってきたな。」
今度は雅也が爽やかな顔でやって来た。

「おはよ……こっちは忙しいんだけどなんの用?会議まで後30分はあるぞ。」

「いや、昨日はどうだったのかなぁと思って。はるばる会いに行って会えたの?」
新田からこっそり俺のプライベートを聞き出したらしいこの男、面白半分に聞いてくる。

「会って少し話したよ。てか、なんでお前に報告しなきゃいけない?プライベートはほっとけよ。」

「ほっとける訳ないだろ。大事な社長が、まかり間違って帰って来なかったらと思うと気になって何度電話しようとしたか。」

「……今まで仕事を疎かにした事ないだろ。」

「で?果穂ちゃんと何話したの?」

「気安く名前で呼ぶな。」
俺だって呼べてないのに、なんでこいつが簡単に呼ぶんだと面白く無い。

「で、進展したのか?」

「そう言う段階じゃないだろ…。
あっちからしたら顔見知りになった程度だろうし。」
翔は仕事の手を止めずに話す。

「仕事じゃ直感で即決めする奴が、珍しく慎重だな。まぁ、お前も人間だったって事で安心したよ。」

「何だと思ってたんだよ…。」

「高性能ロボットみたいな?
学生時代から、完璧過ぎて怖いぐらいだったからな。」

「馬鹿にしてるのか?」

「いや、尊敬してるんだよ。しかし遠距離恋愛は大変だよ?それにお前は多忙だし、土日休みじゃない事だって結構あるだろ。」

「物理的距離はどうにかしたいと思うが…とりあえずお前には関係ない。もうすぐ会議だ。こんな所でサボってていいのか?」

「分かった行くよ。今度行く時は俺も一緒に行くからな。」
そう言って雅也は足速に去って行く。