翌朝、いつも通り出社していつも通り社長室で事務仕事をこなす。朝から書類の決済やら経費の決済が溜まっていた。
 
コンコンコン。
「どうぞ。」

秘書の新田が手に白いダンボールを持って足取り軽くやってくる。

「おはようございます。
今朝早く社長宛にダンボールが二箱届いてます、ご確認を。」

「ああ、みかんだろ?俺が頼んだ。代金は俺が払う。一つはオフィスの皆に配ってアンケートを取って欲しい。
もう一つは商品開発部に送って急ぎ商品開発を推し進めるよう伝えてくれ。」

「承知致しました。この手書きの伝票ですが必要ですか?」
わざわざ聞いてくる事が若干嫌味だが、素直に欲しいと認めて手を出す。

「代引を立て替えしたのは?」
そう言って財布をポケットから取り出しみかん代を出す。

「俺です。社長のプライベートが社内に漏れたらいけない思いまして。」

「…釣りは要らない。」
そう言って一万円札を差し出す。

「口止め料入りって事ですね。了解です。」
ニヤッと悪い顔で笑って颯爽とみかんを持って部屋から出て行く。

アイツのあの顔辞めさせるべきか……。

彼女の手書きの伝票を見る。可愛らしい字で無意識に指でなぞる。
それだけで気持ちが上がる。
引き出しにそっと閉まって何食わぬ顔で仕事に取りかかった。