「今晩は私、翔さんのお父様の秘書をしています。高見沢と申します。」

夕方、いつも通り夕食の支度をしていると、玄関先のインターフォンが鳴って驚く。

いつもはコンシェルジュから連絡があったり、ロビー入口のインターホンが先に鳴るのに…、

ちょっと不審に思いながらインターフォン越しで話す。
「今晩は。あの、翔さんはまだ帰って無いのですが、急用なのでしょうか?」
お父様に何かあったのかと思い聞いてみる。

「果穂さんですよね? 
社長が貴方に会いたいと言われておりまして、急で申し訳ないのですが今すぐ来て頂きたいのですが、
お時間は取らせませんので、送迎は私が責任を持ってさせて頂きます。」

「分かりました。ちょっと翔さんが心配するといけないのですいませんが、連絡だけ入れさせて下さい。」

「翔さんには承諾済みです。
次の仕事の合間なのですいませんが急ぎでお願いします。
あと、スマホは申し訳ないのですが置いてきて欲しいと。
内密なお話なので、翔さんの為です。
よろしくお願いします。」

良く考えれば、おかしいと思うべきだった。

急がされて、待たせてはいけないと頭が回らなくなっていた。

すぐに帰れるなら、翔さんより早く帰って来れるはず。言われた通りスマホを置いてとりあえず、簡単な手紙を書いて部屋を出る。

この時、スマホでメッセージを残しておけば良かった。会議中かもと思い変に気を回してしまったから…