今日、果穂がキッチンカーと共に東京に来る。

翔は朝から人知れず心が弾んでいた。

冬休み、果穂の家族と共に過ごして家族の温かさを味わった翔にとって、正直なところすぐにでも果穂との生活を始めたかった。

だけど溺愛している兄の手前いい出せず…。

毎週末ヘリをチャーターして会いに行くのが精一杯で、遠距離恋愛を耐え忍んでいた。

状況が一変したのは、4月、果穂の兄がついに結婚を決め、兼ねてからお付き合いをしていた女性と入籍、実家近くで同居を始めた。

そのタイミングで果穂の父から連絡があり、もしも本気で結婚を望んでくれているのなら、果穂を東京に呼んでくれないかと相談された。

果穂の父は俺に協力的で、こちらから話をしたいと考えていると、それより先に動いてくれる事がよくあり嬉しい限りだ。

『翔君がヘリコプターを買っちゃう前に、言っておかないとと思ってね。』
そんな事を言ってくれる果穂の父には全く持って頭が上がらない。

果穂も父から背中を押されたらしく、俺が提案しようと電話をかけた当日に、本人から『お邪魔じゃなかったら…』と果穂らしい気遣いの言葉と共に話をしてくれた。

もちろん、直ぐにでもおいでと二つ返事で喜びを伝えた。

果穂がキッチンカーを持っていきたいと、珍しく自分の意思を伝えてきたので、1人で運転して東京まで来る事は心配だからと、週末に俺が車を取りに行くと提案した。

しかし、過保護な兄がこの日なら都合が付くと、今日の日を指定して、わざわざ果穂と共に東京まで来てくれることになった。