「1人で行くのは勇気がいるので、翔さんが居る時にします。」

「何で勇気がいる?」
笑いながらそう聞くから、
「だって、ここにはセレブな人しか住んで無いでしょ?私みたいな小娘が一人でウロウロしてたら、きっと不審がられちゃいます。
今の気持ちを例えるなら…、

不思議の国のアリスになった気分です。
トランプの兵隊に追いかけられて、追い出されちゃいます。」
はははっと、翔さんが堪らずと、言う感じで笑う。

「可愛い発想だな。
誰も果穂の事追い出させないから安心して。でも、そうだな。
プールは1人で行かない事、誰にも果穂の水着姿は見せたくない。」

分かった?っと言う様に、翔さんは私の頭をぽんぽんして笑っている。

「果穂はもっと自分の事を知るべきだ。
多分、亮がそうしない様に育てたんだろうけど…、
原宿辺り歩いたら、果穂のフィルター説は直ぐ崩される。
誰から見ても綺麗で可愛い。だから、1人で出歩くな。」
独占欲丸出しでそう言ってくるから、目を丸くして驚く。

相当疲れてるんだろうな…きっと…。

「お部屋に帰ったら、肩でもマッサージしましょうか?相当お疲れの様なので。」
心配してそう言うのに、

「何故その返し?」
と言って、翔さんはずっと笑ってる。
私もつられて笑いながら、

大丈夫、表情筋は死んでないみたいですよ。と、心の中で思う。