果穂は、はぁーっとため息をついて、
「…分かりました。
そんな遠くには行くつもり無いので、
タクシー使います…。」
がっかりした顔でそう言って外に顔を向ける。

「悪いがこれは譲れない。果穂が大事だから何かあったらと心配なんだ。……怒らないでこっち見て」
静かに、彼女の背中に呼びかける。

クルッと向きを変えこっちを見てくれて安心する。
「怒ってません…拗ねてるだけです。」

赤信号で果穂に目を合わせ、そっと頬を優しく撫で機嫌を伺う。

「髪少し切ったか?」

果穂は目を見開いて驚く。
「よく分かりましたね!!
毛先の傷みだけ切ったんです。2、3センチですよ。お兄ちゃんも分からなかったのに。」

「会った瞬間分かったよ。前髪も若干短い。」

「凄い…よく気付きましたね!」

「どれだけ俺が、果穂の写真毎日見てると思ってる?どれだけ俺が会いたかったか分かってないだろ。」

「私も…会いたかったです…。」

「良かった…。だから機嫌悪くしないで。」

「別に怒ってはいませんから…。」
目を細めて笑いかけてくれる。

「直ぐそこの店。」
そう言って店の看板を指差す。

「うわー、高そうなお店…。
あっ!心の声が漏れてしまいました…。」
そう言って口元を両手で隠すから、プッと笑ってしまう。

「遠慮なく沢山食べろよ。一応社長やってるんだからそれなりに稼いでる。心配するな。」
笑いながらそう言って車を駐車場に停める。

「お礼はキスでいい、前払いで。」
そう言って、シートベルトを外して果穂の柔らかい唇にキスを落とす。

ずっとこうしてたいな。と、思うほど触れていたくなる唇。甘い吐息に我を忘れるくらい唇を交わす。

角度を変えて何度も、
「……あ……っ」
果穂の唇が軽く開いた瞬間、舌を差し入れ優しく口内を舐める。

怖がらせない様に、様子を見ながら徐々に深く交じ合わせる。

小さな舌に絡ませて吸い上げると、いちいちビクッと震えてる反応も可愛い。
「………んっ…。」
我慢出来ず漏れる吐息に上がる息、
唇を離して優しく抱きしめる。

果穂の息が整うまでずっとそのままでいる。

「果穂は俺の全てだから、大事にしたい。
嫌だったら嫌だって言って。」

「…嫌、ではないです……。ただ、心臓がドキドキし過ぎて死にそうです…。
この先、慣れる事なんて出来るんでしょうか…。」

「毎日してれば嫌でも慣れる。」
笑いながらそう言って、髪を撫でる。
果穂は恥ずかしそうにはにかみながら、俺の胸に顔を埋めてぐりぐりと頭を擦るから、愛しさが込み上げてきて堪らない。

「はぁー、果穂は可愛さをもっと自粛するべきだと思う。俺だって我慢の限界があるからな。」
果穂は澄んだ眼差しで、首を傾げて俺を見てくる。

俺をどうしようって思ってるんだ
…頼むからそんな純真な眼で俺を見つめないでくれ。自分を制御出来なくなる。