(翔side)
今日は、改めてみかんの契約農家として約束を交わす為、社員を連れてやって来た。

契約の方は優斗と浅倉に任せ、雅也と2人新しい店舗の物件を見て回っていた。

夕方合流し改めて頭を下げて挨拶をする。

「いろいろと心よくご承諾頂きありがとうございます。」
翔が頭を下げると果穂の父は和かに笑い、

「実は、賞を取って以来何ヵ所か提携の話しがあったのですが、うちとしては信頼がおける企業の方にみかんを託したいと思っておりました。
何度と無くお電話頂き、熱意も感じられ将来性も充分でしたからお願いする事に決めました。」
果穂の父の話しを聞いて翔は身が引き締まる思いがする。

「こちらこそ、この契約を大事に今後共より良い関係を続けていきたいと思っておりますので、よろしくお願いします。」

「社長、そろそろ新幹線の時間が迫ってますので。」
浅倉からそう背中越しに告げられて振り向いた瞬間、
離れた場所でこちらを見ている果穂に気付く。
目が合った果穂が背を向け走り出すから、

「悪い、後よろしく。」
雅也にそう告げ咄嗟に追いかける。

雅也ならその場を上手に収める筈だ。

果穂を追いかけ問い詰めて泣かせてしまったが、気持が伝わりホッとする。