リアンは暫くの間黙っていたが、クローディアに見つめられていたことに気づくと、その白くて細い手をそっと握った。
「…そのようです。すみませんが、ディアは疲れているので失礼させてください。話があるのなら改めて」
そう素っ気ない口調で言うと、リアンはクローディアを抱き起こし、細い腰に手を添え支えるようにしてその場から去った。
異変に気づいて駆けつけてくれたのであろうローレンスに無礼なことをしてしまったと思うが、青い顔をしているクローディアをあの場所に居させたくなかったのだ。
二人は建物の外に出ると、大きな噴水の前にある白塗りのベンチに腰を下ろした。
「……大丈夫?ディア」
リアンの冷たい手が頬に添えられる。触れた時、その指先は微かに震えていて、クローディアは思わず少し笑ってしまった。
「…リアンこそ、震えているじゃない」
「情けないことにね」
リアンは肩を竦めると、ふっと顔を和らげた。
「でも、逃げなかったよ。……前と違って」
少しだけ強くなったのだとリアンは笑う。その横顔はなんだか眩しくて、ずっと見ていられなかった。
クローディアはフェルナンドに言い返すどころか、目も合わせられず──それどころかリアンに守られていた。前と変わらず臆病なままだ。
このままでは駄目だと、変わらなければならないと、自分の中の何かが訴えてくるのを感じる。
(──リアンを盾に、逃げてばかりじゃだめだわ)
フェルナンドはクローディアのことを諦めてはいないようだったが、もう結婚している皇女を手に入れようとしているのなら、邪魔なのは夫君であるリアンだ。だから何度も帝国に来ては、何かを企んでいるのだと考えられるが──。
なんだか嫌な予感がしたクローディアは、きゅっと唇を引き結んだ。
「…そのようです。すみませんが、ディアは疲れているので失礼させてください。話があるのなら改めて」
そう素っ気ない口調で言うと、リアンはクローディアを抱き起こし、細い腰に手を添え支えるようにしてその場から去った。
異変に気づいて駆けつけてくれたのであろうローレンスに無礼なことをしてしまったと思うが、青い顔をしているクローディアをあの場所に居させたくなかったのだ。
二人は建物の外に出ると、大きな噴水の前にある白塗りのベンチに腰を下ろした。
「……大丈夫?ディア」
リアンの冷たい手が頬に添えられる。触れた時、その指先は微かに震えていて、クローディアは思わず少し笑ってしまった。
「…リアンこそ、震えているじゃない」
「情けないことにね」
リアンは肩を竦めると、ふっと顔を和らげた。
「でも、逃げなかったよ。……前と違って」
少しだけ強くなったのだとリアンは笑う。その横顔はなんだか眩しくて、ずっと見ていられなかった。
クローディアはフェルナンドに言い返すどころか、目も合わせられず──それどころかリアンに守られていた。前と変わらず臆病なままだ。
このままでは駄目だと、変わらなければならないと、自分の中の何かが訴えてくるのを感じる。
(──リアンを盾に、逃げてばかりじゃだめだわ)
フェルナンドはクローディアのことを諦めてはいないようだったが、もう結婚している皇女を手に入れようとしているのなら、邪魔なのは夫君であるリアンだ。だから何度も帝国に来ては、何かを企んでいるのだと考えられるが──。
なんだか嫌な予感がしたクローディアは、きゅっと唇を引き結んだ。


