「俺は、三年生の文化祭で四人で作詞作曲の勉強をして歌を作ってステージ発表したことが印象に残ってる。素人四人がちょっと参考書読んだ程度だったのに、結構好評だったじゃん?あの瞬間、歌手なった気分だった」と旬。

その後も、あの先生の授業が退屈だった、修学旅行で北海道へ行ったのが楽しかった、ALTの先生が可愛かった、など高校での思い出が自然と四人の口から出て行く。

懐かしいね、と笑い合う中で旬は泣きそうになって下を向いた。卒業式を終えたら、この四人はバラバラになる。

旬は高校を卒業した後は、実家が経営している旅館で従業員として働くことが決まっている。新は医者になるため京都の有名な大学に進学し、真奈は声優になるため東京の専門学校へ、香穂は隣町にある介護施設で働く。

卒業してしまったら、もう四人で頻繁に会うことはできないだろう。そのため、「最後に会いたい」と新の提案でこうして集まることになったのだ。