「あっ、そうだ!あたしいいもの持って来たんだ〜」

香穂が背負っていたリュックサックから何かを取り出す。それは、夏になると色んな店で売られる手持ち花火のセットだった。

「家の倉庫にあったから持って来た!」

「ナイス、香穂!やりたい!」

真奈がはしゃぎ、袋を開けて一人ずつ花火を渡していく。花火を受け取った旬に、新がポンと肩に手を置いて言った。

「あそ部、最後の活動だな」

「そうだな」

花火に火がつけられると、一瞬にして暗闇に包まれていた浜辺が明るくなる。旬からは黄色の火花が、新からは緑の火花が、真奈からは赤い火花が、香穂からは青の火花が飛び出し、漆黒を鮮やかに彩っていく。

「そういえば、二年の夏にも花火をしたっけ。三年の夏はみんな受験勉強やら就活の準備で忙しかったけど」

楽しかった記憶のワンシーンを思い出して旬が言えば、「そういえば花火したね〜」と真奈が笑う。

「小さい打ち上げ花火を上げたら、木に火花が当たって火事になりかけたっけ」

「慌てて消火したな。あの時はヒヤヒヤしたけど、今じゃいい思い出だな」