徹の家に行くまでの道のりが今までで永遠のように長く感じられた。


今日は昼過ぎに到着する予定だからスーパーに寄ったりもしていないのにこんなに長く感じられるのは、きっと私の足が重たいからだ。


一歩踏み出すのにも力がいるくらい両足が重たくて前に出ない。


体全体が行きたくないと悲鳴を上げているように感じられた。


それでも、もう逃げるわけには行かなかった。


どれだけゆっくり歩いても確実に徹の家には近づいてきていて、その赤い屋根が見え始めていたのだ。


今あの家には徹ひとりだろうか?


それとも……。


リビングで肩を寄せ合う徹と見知らぬ女の子の姿が脳裏に浮かんでくる。


心臓は早鐘をうち始めていて、緊張で吐き気がしてきた。


しかし徹の家はもう目の前だった。


私はいつものように玄関先に立ち、チャイムを鳴らす。


家の中からパタパタとスリッパを鳴らす足音がきこえてきて、緊張はピークに達していた。


玄関が開いて、もしも女の子の靴があったらそのまま帰ろう。


徹は驚くかもしれないけれど、仕方がない。


そしてもう二度とここへは来ない。