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「なにあれ、信じられないんだけど!」


電車に乗ってからも佑美の怒りは止まらなかった。


田中さんがあんな振られ方をしたのは、さすがに私でもどうかと思う。


断るにしても言い方や態度がある。


氷王子というあだ名は西原くんにふさわしいものなのだと、改めて実感した。


「田中さん、ひとりで大丈夫だったかな?」


あの後、結局私達は田中さんに声をかけることができないまま、帰ってきてしまっていた。


振られたところを目撃されていたなんて嫌だろうし、今はひとりにしてあげることにんなったのだ。


だけど、今更ながら気になってきた。


「たぶん大丈夫。あの子はそんなに弱い子じゃないから」


田中さんとは長い付き合いなのか、佑美は何度も頷いてそう教えてくれた。


「そっか。それならいいんだけど」


「うん。きっと、思いっきり泣いてそれでスッキリすると思う」


けれどこのときの佑美の考えは違う意味で裏切られることになる。


翌日学校へ向かうと、田中さんが氷王子に振られたことが話題になっていたのだ。


あの場面を目撃した生徒が他にもいたのかもしれないと思ったが、噂の出どころは田中さん本人らしい。


「振られたことをみんなに話して回ってるってこと?」