「ごめん……なさい」


なにも言わずに見下ろしてくる西原くんから視線をそらして通路を逆向きへと歩いていく。


遠回りをして自分の席へ戻ってきて、ようやくホッとため息を吐き出した。


チラリとさっきの通路を確認すると、西原くんはすでにいなくなっていた。


「気にしないほうがいいよ」


突然佑美にそう言われて「え?」と聞き返す。


「西原くんのこと。誰に対してでもあんな調子だから」


佑美はそう言うと大人っぽく肩をすくめてみせた。


西原くんの態度を幼稚だと考えているのかもしれない。


「どうしてあんなに冷たいの?」


「さぁ、どうしてなんだろうね? 入学してからずっとだから、誰も知らないの」


「そうなんだ……」


誰に対してもあんな態度ということは、別に私が嫌われているわけではないみたいで、少し安心する。


けれど西原くんと関わるのは疲れそうだ。


「顔がいいから好きになっちゃう子も多いみたいだけどねぇ」


佑美はそう言って教室の後方へ視線を向けた。


それに釣られて視線をやると、3人組の女子生徒が固まってきゃあきゃあ楽しそうに会話をしている。