「よ、用事がないから、また後でね」


「え、おい」


聖也の言葉を聞く前に席を立ち、教室から逃げ出してしまった。


そのまま女子トイレに駆け込む。


ここは聖也が絶対に入ってこられない場所だから、逃げるのにはうってつけだ。


「ちょっと、何逃げてるの?」


追いかけてきた若葉が驚いた声で聞いてきた。


「だって、つい……」


聖也が入ってこられない場所に逃げ込むなんて卑怯だとはわかっている。


だけど今は聖也の顔を正面から見ることができなかった。


聖也を見ていると、自分の汚さを再確認させられそうになる。


「やっぱり、悩みは聖也くんのこと?」


聞かれておずおずと頷く。


ここまで追いかけてきてくれたのだから、もう正直に話すしかない。


幸い、トイレには私達以外に人はいない。


「私、自分の汚さに気がついちゃったんだ……」


私は今一番自分の仲でショックを受けていることを若葉に打ち明けた。


今朝の出来事を若葉は真剣に聞いてくてる。


「人が泣いているのを見て安心するなんて最低だよね」