話しの内容はもっぱら氷王子の悪口で、本人がいる中でも平気に大きな声で話をしていた。


いつ氷王子が怒り出すかとヒヤヒヤしたけれど、氷王子はずっと本を読んでいて一度も顔を上げることはなかった。


そして帰りには雨が降っていたのだ。


一応折りたたみ傘は持ってきたけれど、髪の毛はまとまらないしジメジメするし、雨は嫌いだった。


沈んだ気持ちでのろのろと駅へ向かう。


雨の日は電車の中もどくとくのこもった匂いが充満して嫌いだった。


傘についた水滴で床は滑りやすくなるし、いいことなんてない。


大きなため息を吐き出して道路を右へ曲がったときだった。


曲がってすぐの右手にある空き地に人の姿が見えて思わず足を止めた。


その人は透明な傘を肩にかけるようにしてしゃがみこんでいる。


傘の向こうに見えるのは同じ学校の男子生徒の制服だった。


あんなところでしゃがみこんでなにをしてるんだろう?


気になってそっと空き地に足を踏み入れた。


私の足音は雨にかき消されいき、近づいて行ってもその人はこちらに気が付かない。


それをいいことに一気に距離を詰めたそのときだった。


傘の下に白い子猫がいるのが見えたのだ。


子猫は甘えたように男子生徒の足にすり寄っている。