昨日先生がカーテンを閉めていなかったようで、太陽光が降り注いでいる。


秋の柔らかな光の中に揺らめく影があった。


影が右へ左へと揺れて、その揺れはだんだん小さくなっていく。


揺れる度にギッギッときしんでいたロープの遠も小さくなり、やがて完全に停止した。


音が止まるまでの時間はたった数十秒ほどだったと思う。


けれどそれは永遠のように長く感じる時間だった。


「和!!」


音が止まると同時に裕之が駆け出した。


太いカーテンレールからぶら下がった和の体に抱きつくようにして助けようとしている。


私と加菜子もそれに続いたが、和の伸びた首を見た瞬間遅かったのだと気がついた。


ロープの揺れは和が最後まで抵抗していた証だったのかもしれない。


伸び切った首に、口からは臓器が飛び出し、床には糞尿が溜まって異臭を放っている。


その濁った水たまりに足を踏み入れても裕之は少しも気にかけることなく、和の名前を呼び続けていたのだった。