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制服にも着替えず、カバンも持たずに飛び出した私が到着したのは学校だった。


途中で加菜子にも連絡を入れて3人合流して和を探したが見つからない。


どれだけ電話をしても通じない。


和が行きそうな場所はすべて探した。


そしてたどり着いた場所だった。


校舎内はまだ電気も灯っていなくて薄暗いが、数人の先生と警備員の姿はあった。


「学校に和が来ていれば、きっと誰かが気がついてるはずだよ」


きゅっきゅっとゴムの足音を立てて3人で教室へ向かう中、加菜子が言った。


そうだ。


きっと誰かが和の存在に気がついて声をかけたり、引き止めたりしているはずだ。


そう自分に言い聞かせるが、階段を1段上がる度に嫌な汗が吹き出してくる。


和は裕之と同じ部屋で眠っていたという。


しかし、裕之が全く気が付かない内にいなくなっていたのだ。


先生たちが和の存在に気がつくことができたのかどうか、怪しい。


見慣れた自分たちの教室にたどり着いたけれど、ドアを開ける勇気がでなかった。


ここを開けて中の様子を見てしまえばすべてが現実になる。


今ならまだ悪い夢だったと引き返すことができるんじゃないだろうか。


躊躇している私の前に出て裕之がドアに手を伸ばした。


その手は躊躇することなくドアを開け放つ。


途端に眩しい光を感じて目を細めた。