死体写真

☆☆☆

クリちゃんの写真が飾ってある仏壇は棚の一角に収納するこじんまりとしたタイプのものだった。


仏壇に線香を立てて手を合わせる。


線香は高級なものを用意しているようで、甘くていい香りがリビングに広がった。


「あなたたちの言う通り、アキナはひと月前に自殺したわ」


女性、栗原アキナちゃんの母親は私達にお茶を出してくれて、それからソファに座って話しだした。


「アキナちゃんになにがあったんですか?」


聞いたのは加菜子だった。


しかしアキナちゃんの母親は左右に首をふると「なにもないわ。あの子に限って自殺するようなことはなにも」と、言い切った。


誰でも身内が自殺すれば、同じようなセリフを言うかもしれない。


それは自殺した身内が自分たちになにも相談することなく逝ってしまったことを受け入れることができず、やむおえず反発しているに過ぎない。


けれど、この女性に限ってはなにか他に理由がありそうだった。


「あの子、夜中に一人で泣いてたの。『死にたくない。死にたくない』って、怯えたように呟いてた」


その光景を鮮明に思い出したのか、顔が歪む。