「名前か……たしかクリちゃんって呼んでた気がする。名字が栗浜だとか、栗原だとか、そんな感じだっけな?」


プリクラともらったときに少しその子の会話をしただけだから、記憶は鮮明じゃない。


だけど○○高校に通っていたクリちゃんという情報だけで十分だった。


なにせ彼女はもうすでに亡くなっている。


亡くなった生徒の中でクリちゃんと呼ばれていた子は、そんなに多くないはずだ。


「ありがとう和。助かった」


「いいけど、死んだ人のことなんて聞いてどうするつもりだよ?」


「ちょっと、調べ物をしているだけ」


「調べ物って、もしかしてアコに関係してることなのか? それなら俺も手伝う」


勢いよく立ち上がる和にベンチがギッと短く悲鳴をあげた。


「でも……」


意気消沈している和にこれ以上の迷惑をかけるわけにはいかない。


加菜子もそう考えているようで困ったように首をかしげた。


「頼むよ! なにかしてないと、頭がおかしくなりそうなんだ!」


頭を下げて懇願する和に慌てて「そこまでしないで」と諭す。


周りから変な目で見られてしまう。


それに、普段ヤンチャな和がここまで頼み込んで断れるわけがなかった。


「これから隣町の○○高校へ言って、クリちゃんについて聞くつもり。和もついてきてくれる?」


「おう! もちろんだ!」


そう答える和は少しだけ血色が戻っていたのだった。