しかしアコは目を輝かせて、隣町で蔓延しているという宗教について語り始めてしまった。


それを加菜子は真剣に聞いて、何度も相槌を打っている。


アコは元気で明るい性格をしているけれど、少し噂話が好きすぎる性格をしている。


今みたいに信憑性の薄い話でもすぐに信じてしまうのが玉に傷だ。


「まぁた変な話してんのかよ」


呆れ声を出しながら近づいてきたのは千田数と高橋裕之だ。


私は裕之と目を気交わせて軽く微笑んだ。


「金のない高校生が宗教なんかにハマるかよ」


「じゃあ和はどうして自殺者が相次いでると思うの?」


宗教説を一喝した和に加菜子が質問している。


「そんなの、イジメとか、勉強のストレスとか、そういうもんだろ?」


一番学生らしい理由だと思う。


私も和と同じ意見だった。


「えぇ? それじゃ普通じゃん!」


それに対して頬を膨らませたのはアコだった。


アコはできるだけ面白いものに飛びついていきたいタイプだ。


「普通でいいんだよ、普通で」


私は苦笑いを浮かべてアコをなだめる。


それでも不服そうに唇を尖らせるアコを見て裕之が笑った。