「やっぱり、隣町でなにかあったんだと思うんだよね」


「なにかってなに?」


「それはわからないけど。なにかこう、大変なことだ」


ふわりとした説明に思わず笑ってしまいそうになるけれど、加菜子が言おうとしていることは理解できる。


自殺者が相次いでいる今、隣町ではヤクザがらみの連中が学生に手を出しているだとか、相当ヤバイ筋の子供が転校してきて好き勝手しているとか。


そういう噂が後をたたない。


「それ、私もそうおもう!」


突然後ろから声をかけられて振り向くと、クラスメートの川口アコが立っていた。


アコは150センチでショートカット、更に童顔のためよく小学生に間違えられている。


「ね、そうだよね?」


「うん。私が聞いた話だと、自殺した子たちはみんな変な宗教にハマってたって噂!」


「宗教? 高校生で?」


私は思わず聞き返す。


さすがにそれはデマなんじゃないかと思う。