死体写真

今は風がふいても心地よくて、私の背中を押してくれているように感じられた。


もう1度目を閉じてみると今度は心地よさを感じた。


フッと思わず口角がゆるむ。


これなら大丈夫そうだ。


恐怖心も、不安定感も拭い去られて、今ならどこまでも飛んでいくことができる。


大きく息を吸い込んで右足を前に出した。


地面がなくなり、空中に投げ出された右足。


そしてもう一歩踏み出そうとしたそのときだった。


「なにしてる?」


そんな声が聞こえたと同時に腕を掴まれていた。


ハッと息を飲んで目を開ける。


空中へ投げ出された右足から途端に寒気が這い上がってきて、地面におろした。


振り向くとそこには裕之が立っていた。


私を睨みつけて、口をへの字に曲げている。


「裕之、どうして……」


驚きとチャンスを失った喪失感で複雑な心境になる。


「今朝、結の家に行ったんだ。結は俺のためにあれだけのことをしてくれたのに、俺、つい突き放したから、謝ろうと思って」


「そうなんだ……」