死体写真

この声が少しでもイオリに届けばいい。


決してイオリの呪いの結果ではないと、知らしめてやる。


胸まである塀は人が一人立てるくらいの幅がある。


私は両手で自分の体を持ち上げて、その上に座り込んだ。


高い場所は得意じゃないから、ここに登るだけでも全身が震え上がってしまう。


座り込んだままどうにか立ち上がろうとするのだけれど、手足が震えてうまくいかない。


「しっかりしなきゃ」


自分自身の足を両手で叩いて、無理やり立ち上がる。


その瞬間風が強く吹き付けていてギュッと目を閉じた。


目を閉じた瞬間方向感覚が失われる。


左右も、上下もわからなくなって、危うく足を踏み外しそうになりパッと目を開いた。


階下に広がる建物や人、車はどれもジオラマのように小さくて、踏み出した自分の足で簡単に踏み潰せてしまいそうに錯覚する。


鼓動を鎮めて深呼吸し、空を見上げる。


下を見るから怖くなるんだ、上を見ていれば私だって平気でいられる。


空には白い雲が浮かび、鳥たちが自由自在に飛び立っている。

そう、私は今から鳥になるんだ。


ここから飛んでも落ちることはない。


空高く舞い上がり、大きく羽を伸ばすんだ。


両手を広げて空を見つめると恐怖心がスッと遠のいていく。