死体写真

踊り場にある扉の向こうからは人の声がひっきりなしに聞こえてきているけれど、まさか私がビルの屋上を目指しているなんて、誰も気が付かない。


時折聞こえてくる楽しそうな笑い声に胸がズッシリと重たくなる。


裕之も今頃学校に到着して、あんな風に笑っているのかな。


その中に自分がいないのは悲しいけれど、どうかそうであってほしい。


いつまでも悲しい顔や、苦しい顔はしていないでほしい。


じゃないと、私が人を殺してしまった意味がなくなってしまうから。


カンッと最後の1段を踏みしめて屋上に到着した。


なにも遮るものがないビルの屋上は風が強くて髪型がすぐに乱れてしまう。


灰色のコンクリートで固められた胸までの塀と、水色に塗られたベンチが3つ。


端っこの方に喫煙所が設けられているだけの簡単な屋上になっていた。


私はフラフラと塀へ近づいていく。


タイムリミットまではまだ丸々24時間くらいある。


だけどそれを待っていたのでは、呪いの思うツボに動かされてしまうだけだ。


「私は違うの。私の意思で死ぬんだから」


空へ向けてそうつぶやく。