そのときの少年は決まって死んだときの姿をしていて、全身が血まみれだった。


ポタポタと床に落ちる血は血溜まりをつくり、少年はその中で佇んでいる。


朝になると少年は忽然と姿を消しているから、それがすべて自分の幻想に過ぎないと気がつくのだ。


「結。今日も学校を休むの?」


ドアの向こうから母親の声が聞こえてきて枕から顔を上げた。


サイドテーブルの時計は朝の7時半を指している。


学校へ行くならそろそろ起き出して準備をしないといけない時間だ。


「……休む」


短く答えて再び枕に顔をうずめたときだった。


乱暴にドアが開く音が聞こえてビクリと体を震わせ、再び顔を上げた。


母親が眉間にシワを寄せて部屋の中に入ってくる。


「ショックだったのはわかるけど、いつまでそうしているつもり?」


そろそろ怒られるんじゃないかと思っていたら、案の定だ。


なにも知らない母親は半分呆れ顔をしている。


「あんたが事故を起こしたわけじゃないんだから、そこまで気にしてどうするの」


そう言われても、なにも返事はできなかった。


あの時少年の背中を押したのは自分だと言うことができたら、どれだけ楽だったか知れない。