死体写真

そこには信号待ちをしていた小学生たちがいる。


私の両手がランドセルに触れた。


そして、それを思いっきり突き飛ばす。


「ぎゃっ!」


と、短い悲鳴が聞こえたような気がした。


だけどそれは一瞬で消えていき、今度は車の急ブレーキ音となにかに衝突する音、後方車からの盛大なクラクションで、騒音の渦が巻き起こった。


なにが起こったのかわからなかった。


目を開けることができなかった。


まわりの人たちが悲鳴を上げて逃げ出し、誰かが救急に連絡する声が聞こえてくる。


「結!」


名前を呼ばれて私はようやく目を開けることができた。


目の前で小学生の男の子が倒れている。


頭から血をながし、目はうつろに空中を見つめる。


全身のちからが入らないようで、少しも動こうとしなかった。


「写真……」


震える声で言っていた。


裕之が「え?」と聞き返してくる。


「写真を撮らなきゃ……」


ふらふらと昨日を停止している歩道へ出て、少し遠くから少年の写真を撮影する。


1枚でいいのかわからなくて、何枚も撮影した。


私が裕之の元へ戻ってきたときに、ようやく救急車が到着したのだった。