エレベーターが病棟のある3階に到着して、チンッと安っぽい音を立てる。


クリーム色の扉が左右開くと目の前がナースステーションになっていた。


しかし中には誰も居ない。


廊下を慌ただしく走る足音が聞こえてきて、ストレッッチャーがガラガラと移動されていく。


「なにかあったのかな」


急変患者でもいたのなら邪魔になってはならないと、しばらくエレベーターの横で待機する。


どこかの病室が開閉し、男子医師が足早にそちらへ向かう。


それを見送ってからようやく私達は加菜子の部屋を探し始めた。


受付で聞いたのは304号室だ。


エレベーターを降りて右手に310号室がみえた。


左手には301号室がある。


「こっちかな」


ナースステーションを挟んで5室ずつが並んでいるようで、私たちは301号室のある右手の廊下へと向かった。


さっき医師たちが行き来していた廊下をゆっくりと歩いていく。


302号室、303号室ときて、次が加菜子にいる病室だ。


しかしそこに行き着くまでに私達は足を止めていた。


さっき医師が入っていった部屋は304号室ではなかったか?


そこは加菜子がいる病室ではないか?


瞬間、嫌な予感で呼吸が乱れた。


吐くことを忘れて吸い込んでしまい、クラリとめまいが起こる。


「大丈夫か?」


揺れる体を裕之に支えられて、どうにか立っていることができた。


まだなにも聞いていない。