付き合って1年目のあの日は結局真っ直ぐに家に帰るだけだった。


でも、私達の間ではもう心の準備ができている。


ふたりでともに過ごせる時間があれば、もう一歩を踏み出すことができるはずだった。


「ねぇ!」


ガタンッと椅子を蹴る音がして振り向くと、青ざめたアコが勢いよく立ち上がって裕之の方へかけていくのがみえた。


その表情は真剣そのものだ。


「アコ、どうしたんだ?」


圧倒された裕之がその場に立ち止まり、数歩後ずさりをする。


「この前言ってた噂って、ただの噂だよね!?」


突然アコに両肩をガッシリと掴まれた裕之は目を見開いて唖然としている。


「ねぇってば!?」


「う、噂ってなんのことだっけ?」


学校内での噂話は毎日のようにはびこっている。


そのどれもが些細無いことで、すぐに忘れてしまうようなものばかりだ。


それに、噂話しに関してならアコのほうが詳しいはずだ。


「ちょっとアコ、どうしたの?」