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加菜子の体は少し離れた川の中央にあった大きな岩にひっかかり、鯉のようにその場に留まって揺れていた。


見つけた裕之は躊躇なく川に入っていき、加菜子の体をどうにか河川敷へと引っ張り上げていた。


ずぶ濡れになった裕之はガタガタと震え、加菜子はキツク目を閉じたまま動かない。


加菜子の胸に耳を押し当ててみると、心拍が確認できた。


「行きてる!」


流されてからそれほど時間が経過していないのがよかったみたいだ。


ホッとしたのもも、このままではどこにも行くことができなことに気がついた。


水から遠ざかるにしても、加菜子には意識がないのだ。


「救急車を呼ぼうか。病院なら安全かもしれないし」


院内にも水場はあるけれど河川敷にいることを思えば雲泥の差だ。


加菜子の異変に看護師や石が気がつけば止めに入ってくれるだろう。


「そうだな。それがよさそうだ」


裕之は震えながら頷いたのだった。