まるで、天井から悪いものが来るかもしれないと見張っているように見える。


布団から右手を出して加菜子の左手を握りしめた。


ふわりとして柔らかな手のひら。


少し冷たくて心地いい。


加菜子の視線がこちらへ向いた。


その瞳は揺れて、涙をためている。


上を向いていなければ溢れ落ちてしまいそうだったのかもしれない。


「大丈夫だよ加菜子。ずっとこうして手をつないでいよう」


手をつないで眠れば相手がいなくなったときに気がつくことができる。


例えば加菜子がどこかへ行こうとしていても、止めることができる。


「うん……ありがとう」


加菜子のか細い声が薄暗い室内に響いたのだった。