「光(ひかり)ー! 出かけるぞ」

「……」

「光? 何を見てるんだ?」

「おとーさん、これ……」

娘の光が持っていたのは、赤いチェックのノートだった。
雅が中学の頃、いつも持ち歩いていたあのノートだ。

「これ……懐かしいな」

「アイス、いーっぱいあるの。
ケーキもね、いーっぱいあるの!」

「……ああ、そうだな……」

3歳になり、幼稚園に入学したばかりの長女 光は大のスイーツ好きだ。

幼稚園に持っていくお手拭きタオルも、一つだけ園カバンに付けるのが許されているマスコットも、全てケーキやアイスクリームの柄だったりする。
母親の影響か、それとも血か……。