「ローズティーだね。いい香りだ」
「ありがとう。バラの栽培をしているご近所さんにわけてもらって、カルラと作ってみたの」

 本棚に向かいながら説明した。 

「うまい。ローズティー、大好きなんだ」

 本棚から本を取り出していると、彼がクッキーを食べているのを背中で感じる。

「クッキーもうまい。もしかして、このクッキーもきみが?」
「ええ」

 本を胸元に抱え、長椅子へと戻る。

「カルラに習いながらだけど。彼女は何でも出来るから、教わることが多いの」
「ほんとうにうまいよ。街のスイーツの店より、きみのクッキーの方がずっとうまい」

 アレックス、いくらなんでもおおげさよ。こんなところでも、小説のまんま大絶賛しなくてもいいわ。

 過度な褒め言葉は、かえって嫌味になるから。

「料理やスイーツとか何かを作るのって、だれかのことを想っていればいいものが出来るよね」

 彼は、わたしが長椅子に腰をおろしたタイミングでそう言った。