「クー?」

 彼の甘えた声でハッとした。

「大丈夫みたいね。でも、彼って狼、よね?」

 そう確認をした相手は、アレックスである。

 ロボ・ドラドとは、金色の狼という意味である。

「え?まぁ、ね。彼は、きみのことがとっても気にいっているみたいだ。いや、大好きって言った方がいいかな。とにかく、可愛く見せたいみたいだね」
「はあ?」

 アレックスは苦笑している。

 彼の言っている意味がよくわからない。

「キュキュッ」

 そのとき、ロボが身をよじってわたしの手から逃れ、机の上に着地した。

「あらら。気がつかなかったわ。今朝は卵の数が少なかったのよ。あのレディたち、ここで産んだみたい」

 机の上に卵が二個のっている。

「へー」

 アレックスが近づいてきた。途中、ローテーブルの上に胸元の紙袋を置き、わたしの横に立った。

 物珍しそうに卵を見ている。

「触ってみて」

 わたしが言うと、彼は恐る恐る手を伸ばして二個の卵にそっと触れた。