「なんだって?いまじゃなきゃダメなのか?」

 肘をつかんで無理矢理奥へとひっぱっていきはじめたわたしの背に、彼のブーイングがぶつかった。

「そうよ。いまじゃなきゃダメなの」

 そして、執筆部屋代わりにしている書斎に連れて行った。

「アニバル、どうなの?」
「あああ?何がどうなの、だよ?」
「決まっているでしょう?カルラのことよ。真剣なの?彼女、ほんとうにほんとうにほんとうにいいレディなのよ。あなたみたいなのにはもったいないわ。もしもあなたが、遊び相手にとかやらせてくれる相手とかって思っているんだったら、いますぐここから叩きだすつもりよ。当然、彼女に二度と会わせるつもりはないし、担当だって他にかえてもらうから。副編集長の肩書なんていらない。ヒラでも下っ端でも、担当作家の姉的存在のレディをだましたりそそのかしたりしない編集者にしてもらうわ」