「ええ、ええ、もちろん。楽しんできて」

 そう答えるしかないじゃない。

 人の恋路を、もといデートを邪魔するほど無粋じゃないから。

 だけど、確認しておきたいことはある。

「ちょっとアニバル、確認したいことがあるの」

 アニバルも昨日と同じような恰好である。ヨレヨレのシャツにシワだらけのグレーのスラックス、それとさらにヨレヨレしわしわのジャケットを着用している。

 アレックスと同じようにシャツの第一ボタンをはずしているけれど、アニバルはどこからどう見てもどう贔屓目に判断しても、だらしがないようにしか見えない。

 彼の肘をつかもうとして、ジャケットの肘部分がテカテカしていることに気がついた。

 カルラ。美しくって気立てのいいあなたが、こんなのでいいの?

 心の中で問わずにはいられない。