浮気性の公爵に「外見も内面も最悪」と離縁されましたが、隣国の王太子は見染めてくれたようです~自由気まま少々スリリングな生活を満喫中です~

「面倒です。馬車は置いていきましょう」
「ダメだ。証拠になるようなものを残すバカがいるか?だれかそこまで行って呼んで来い。ついでに、食い物もな」

 ベレー帽の男が命じると、ブツブツ言いながらも一人が乗用馬に跨り、彼らがきた道を戻っていった。

 馬上のその背を見送るでまでもなく、わたしはさっさと彼らに別れを告げることにした。

 すなわち、くるりと背を向けてもと来た道を帰ろうとしたのである。

「おい、レディ。名は?」

 すると、ベレー帽の男の鋭い声が後頭部にあたった。