昨夜の彼自身の雰囲気や行動からすれば、バイオレンスやハードボイルド系ではなさそうな気がする。理屈をこねるような感じじゃないので、ミステリーや医療系でもないわよね。男性だから恋愛や児童小説っていうのもどうかしら?歴史やエッセイやフィクション、ノウハウ系?だけど、シリーズ物で巻数があるから、エッセイや実用書ではないかもしれない。

 ふと、彼がわたしのジャンルをどう推測しているか気になった。

 恋愛かしら。そうよね。女性作家だったら、当然のようにそうかんがえるわよね。
 彼もシリーズ物だと知っているから、同じようにエッセイや実用書は推測から外しているかもしれないわね。

 そんなどうでもいいようなことをかんがえつつ走っているものだから、周囲に気を配ることがおろそかになってしまっている。

 隣国へと続く分岐点に、荷馬車がとまっていることに気がついた。