「レシピ本、ありがとうございます。失礼いたします。カルラ、行きましょう」

 彼女をうながし、歩きはじめた。

「あの……」

 数歩歩いたところで、彼が何か言いかけた。

 下手な小説だったら、その続きは「またお会い出来ますか?」よね。

「またお会い出来ますか?」

 小説まんま君、ありがとう。そのまんまだわ。

 じゃあ、わたしも小説のまんまでいかせてもらうわね。

「ええ、いずれきっと」

 振り返って自分でも最高じゃないかしら?っていうような笑みを満面に浮かべて応じた。

 そして、颯爽と去った。

 小説そのまんまみたいなことってあるんだ、とある意味感動しながら。

 まさかこのとき、小説そのまんまな展開にどっぷりつかることになるなんて、まーったくかんがえもしなかった。