「大丈夫よ。この大量の金貨は、ちゃんと慈善活動にまわすから。だから、安心して逃げてちょうだい。どうせ、これだけ持っていけないでしょう?ほら、当座の資金にこれを持って行って」

 ズボンの前ポケットに手をつっこむと、そこから巾着袋をひっぱりだした。子どものときにカルラと二人、おなじ布地から作った思い出の品で、いつも持ち歩いている大切な物である。

 その巾着袋には、なにかあったとき用に金貨二枚と銅貨を五枚入れている。

 その愛着ある巾着袋ごと、彼女たちに放ってやろうかと思った。

 だけど、わたしにとっては中身より袋の方がずっとずっと価値がある。

 だから巾着袋に手を突っ込み、金貨二枚を取り出してビビアナに放った。