「もうわからせてやるのも面倒だわ。こいつのお(つむ)はお花畑なんだし、言ってもわからない。すぐにでもやっちゃえば?」
「おいおい、ビビアナ。ここはアジトの中でも一番のお気に入りなんだ。そこを血で穢すなんて勘弁してもらいたいな」
「なんてことなの」

 思わず、言葉を発していた。

 全員がわたしに注目した。

「作中に出てくる気取り屋の悪党みたいな台詞をリアルにきけるなんて、ちょっと感動だわ」

 だってそうでしょう?

 フリオだったら、ビビアナに「おまえのその血を吸ったような真っ赤な唇にそそられるぜ」とか「おまえの為なら屍の山を築いてやる」とか、小説の中のカッコつけの小悪党のようなダッサダサの台詞を平気で言ってのけるのでしょうね。