「でっわたしに何の用かしら、色男さん?」

 なんだろう。

 彼女は、たしかに美しいしお色気満載である。彼女もそれを自覚している。だからこそ、それらを武器にして元夫のような愚か者を釣り上げる。

 その自信のあらわれが、いまの問いってわけなのね。

 全世界の色男が、自分に興味を抱いていると思い込んでいる。

 ちょっと待ってよ。

 スケコマシのアレックスが、彼女の美貌や色香にどう反応するかしら?

 ちょっと期待してしまう。

 彼が彼自身の「白ユリの楽士」の主人公スケコマシのセシリオを髣髴とさせるテクニックを、披露してくれるかもしれない。

 そんな期待とは反面に、心の奥がチリチリしているしイライラもしている。

 どうしてこんな複雑な気持ちに陥っているのか、当然自分ではわからない。