「なんなの、そいつ?連れてきちゃったの?殺して捨てればよかったのに」

 現れた人物は、目がチカチカするようなピンク色のドレスを身にまとっている。

 以前、図書館で見かけたときにきいた声。

 元夫に離縁を叩きつけられたとき、彼が侍らせていた。そのとき、彼女は一言も言葉を発しなかった。

 だけど、間違いないわ。一度きいたら忘れられない声だから。

 ねっとりと耳にまとわりつくような不愉快な声。

 彼女に間違いない。

 元夫の二人目の妻のビクトリアである。

「ビ、ビクトリア……、よかった。会いたくて会いたくて、捜しに来たんだ」

 そのとき、それまでグッタリしていた元夫がガバッと顔を上げて暴れはじめた。

 なるほどね。元夫は、自分の前から消えた妻を捜しに来たわけね。