「やだ。この子、やっかんでいるわ」
「いや、クミ。怒り狂っているんじゃないのか?」

 ミニモフモフがあまりにも可愛らしく妬いているのでそう言ったところを、アニバルが冷静にツッコんできた。

「ああ、そうね。よそのワンちゃんのことを褒めたからね」
「お嬢様、ワンちゃんってやきもちやきが多いらしいですよ」
「いや、二人とも。ズレまくっている気がするんだが……」
「しまったわ。つい、ワンちゃんのことで盛り上がっちゃって。こうしている間にも、殿下が殺されるかもしれない。ミニモフモフ、はやくなさい。うまくいったら、ご褒美に口づけしてあげる」
「キュッキュッキュー」

 ミニモフモフは、ご褒美のことがよほどうれしいのね。体全体を左右にフリフリしながら右肩上から飛び跳ね、地面に着地した。

 それから、街道を国境のある方角へダッシュした。