「ところで、みなさんがそんなにご執心な小説ってどういう小説なんですか?」

 このとき、なぜか興味がわいた。どうして興味がわいたかは、ずっと後になってもなぜかはわからないでしょう。

 彼女たちが恋愛物の書架の前で談義していたのだから、ぜったいに恋愛物の小説に違いない。しかも、シリーズである。恋愛物でシリーズって、よく書けるものよね。

 それはともかく、とにかくわたしにとっては別の異なる世界に等しいくらい無縁でまったく興味のないジャンル。それなのに、尋ねてしまった。

「隣国の小説家ナタリア・イグレシアスの恋愛物「白ユリの楽士」シリーズなのです。ご存知ですよね?」

 メガネでおさげ髪の()が教えてくれた。

 ふうん。それって知っていて当然のシリーズ物なんだ。 

 それにしても、「白ユリの楽士」ですって?